設計基礎(3)~基本設計の基本~

1. アーキテクチャ設計

アーキテクチャ設計は、システムの全体構造を決定する重要なプロセスです。

システムが効率的に機能し、スケーラビリティや保守性を考慮した設計を行うことが求められます。

このセクションでは、システムの大枠をどのように設計するか、モジュール分割とデータフローに焦点を当てます。

システムの大枠をどのように設計するか

システムの大枠を設計するプロセスは、プロジェクトの成功に不可欠です。

要求分析の確認

システムの要求事項を再確認:

 • ビジネス要求の理解: プロジェクトの目標と期待される成果を明確にし、ビジネスゴールとシステムの役割を明確化します。

 • ユーザー要求の収集: システムのユーザーがどのような機能を必要としているかを調査し、ユーザーストーリーやユースケースを通じて具体化します。

 • 要件の優先順位付け: 全ての要件を洗い出し、プロジェクトの重要度や実現可能性に基づいて優先順位をつけます。

非機能要件の考慮:

 • 性能要件: システムのレスポンスタイム、スループット、キャパシティなどを明確にし、パフォーマンス指標を設定します。

 • 信頼性要件: システムの可用性、フォールトトレランス、バックアップおよびリカバリ計画を策定します。

 • セキュリティ要件: データの機密性、整合性、認証、認可、暗号化のポリシーを設定します。

 • 運用要件: システムのメンテナンス性や監視体制、ログの管理についても考慮します。

アーキテクチャスタイルの選定

  • アーキテクチャスタイルの検討:

  • レイヤードアーキテクチャ: 論理的に異なる層に機能を分けることで、責任を分離し、開発や保守を容易にします。

  例: プレゼンテーション層、ビジネスロジック層、データアクセス層。

  • クライアントサーバーアーキテクチャ: クライアントがリクエストを送り、サーバーが処理を行う構造で、集中管理が可能です。

  • マイクロサービスアーキテクチャ: 小さな独立したサービスとして機能を分割し、各サービスが独立して開発・デプロイ可能です。スケーラビリティやチームの独立性を

  向上させます。

  • イベント駆動型アーキテクチャ: イベントの発生に応じてシステムが応答する構造で、リアルタイムの反応が求められるシステムに適しています。

 • メリットとデメリットの比較:

  • レイヤードアーキテクチャ: 分かりやすく、開発者が多数いる場合に便利だが、層間の依存性が高まる可能性があります。

  • クライアントサーバーアーキテクチャ: セキュリティやデータ管理がしやすいが、サーバーの負荷が高くなる場合があります。

  • マイクロサービスアーキテクチャ: スケーラブルで、迅速なデプロイが可能ですが、サービス間の通信やデータ管理が複雑になることがあります。

  • イベント駆動型アーキテクチャ: リアルタイム性が高く、拡張性もありますが、イベントの管理が複雑になる可能性があります。

 • 最適なスタイルの選択:

  • プロジェクトのスケール、チームの規模、既存のインフラとの整合性を考慮し、適切なアーキテクチャスタイルを選びます。

技術スタックの選定

 • プログラミング言語の選定:

  • プロジェクトの特性に最適な言語を選択します。例えば、ウェブ開発にはJavaScriptやPython、モバイルアプリにはSwiftやKotlinが一般的です。

 • フレームワークの選定:

  • 開発速度を向上させるため、言語に適したフレームワーク(例:React、Django、Spring)を選びます。

 • データベースの選定:

  • システムのデータモデルに基づいて、リレーショナルデータベース(例:PostgreSQL、MySQL)やNoSQLデータベース(例:MongoDB、Cassandra)を選択します。

 • クラウドサービスの選定:

  • AWS、Azure、Google Cloudなどのクラウドプラットフォームを選び、コスト効率やスケーラビリティ、セキュリティを考慮します。

選定基準の明確化:

 • チームのスキルセット: チームが既に熟知している技術を活用することで、学習コストを削減します。

 • プロジェクトの特性: プロジェクトの規模や複雑性に応じて、技術スタックを選びます。

 • 将来の拡張性: 技術選択が長期的な成長を妨げないように考慮し、容易にスケールアップ可能な技術を選びます。

2.システム間インターフェースの設計

プロトコルの選定:

REST (Representational State Transfer):

• HTTPを基盤とする軽量な通信プロトコルで、URLを用いてリソースにアクセスします。

• ステートレスな通信が可能で、スケーラビリティが高く、広く使用されています。

• JSONやXML形式でのデータ交換が可能で、Webベースのアプリケーションに適しています。

SOAP (Simple Object Access Protocol):

• XMLを使用したプロトコルで、より複雑なセキュリティやトランザクション管理が可能です。

• 高いセキュリティとエンタープライズ環境における信頼性を提供しますが、RESTと比較して実装が複雑です。

gRPC (gRPC Remote Procedure Call):

• Googleが開発したプロトコルで、プロトコルバッファを使用して効率的なデータ交換を行います。

• 双方向ストリーミングをサポートし、低レイテンシーが求められるアプリケーションに適しています。

最適なプロトコルの選択:

• 通信の目的や要件(セキュリティ、パフォーマンス、可用性)を考慮し、最適なプロトコルを選択します。

API設計:

エンドポイントの設計:

• 各機能に対応するエンドポイントを定義し、リソースごとにURLパスを設計します。

• REST APIでは、リソース名を名詞として表現し、HTTPメソッド(GET、POST、PUT、DELETE)を使用して操作を指定します。

リクエスト/レスポンス形式の定義:

• リクエストパラメータやレスポンスデータの形式を詳細に定義し、必要な情報を正確に交換できるようにします。

• 一般的にはJSON形式を使用し、データの可読性と互換性を高めます。

エラーハンドリング:

• 異常時のレスポンスコードやエラーメッセージを定義し、クライアントがエラーを適切に処理できるようにします。

• 共通のエラーフォーマットを定め、デバッグやユーザーへのフィードバックを容易にします。

APIドキュメントの作成:

• エンドポイントの仕様や利用方法をドキュメント化し、開発者がAPIを正しく利用できるようにします。

• SwaggerやOpenAPIなどのツールを活用して自動的に生成する方法もあります。

システム内インターフェースの設計

モジュール間通信:

メッセージング:

• RabbitMQやKafkaなどのメッセージングシステムを利用して、非同期通信を実現します。

• 各モジュールが独立して動作し、疎結合を実現します。

イベント駆動型通信:

• イベントが発生した際に、それをトリガーとして他のモジュールが処理を開始する通信方式です。

• システムのリアルタイム性を向上させ、スケーラビリティを高めます。

共有メモリ:

• 同一プロセス内での高速なデータ共有が可能ですが、同期のためのロック機構が必要です。

• パフォーマンスが求められる場合に利用しますが、設計には注意が必要です。

適切な通信方法の選定:

• モジュール間の依存性やデータの一貫性を考慮し、適切な通信方式を選定します。

データ形式の定義:

JSON (JavaScript Object Notation):

• 人間が読みやすく、機械が解析しやすい形式で、Web APIや構造化データの交換に広く使用されます。

XML (eXtensible Markup Language):

• 階層構造を持ち、データのラベル付けが可能であり、複雑なデータ構造の表現に適しています。

プロトコルバッファ:

• Googleが開発したデータフォーマットで、バイナリ形式での効率的なデータシリアライズを提供します。

• データのサイズを小さく保ちながら、高速な処理が可能です。

データ形式の標準化:

• データ形式を統一することで、システム間の互換性を高め、開発・保守コストを削減します。

SHARE
採用バナー