
Angularとは?ReactやVueとの違い
Angular(アンギュラー)は、Googleが開発・保守しているオープンソースのフロントエンドWebアプリケーションフレームワークです。TypeScriptで書かれており、大規模なエンタープライズ向けのアプリケーション開発に適しています。
よく比較されるのが、ReactやVue.jsといった他のフロントエンドライブラリ・フレームワークです。それぞれの違いを以下の表にまとめます。
🔍 AngularとReact・Vueの比較表(図表)
項目 | Angular | React | Vue.js |
---|---|---|---|
開発元 | Meta | OSSコミュニティ | |
分類 | フレームワーク | ライブラリ | プログレッシブFW |
使用言語 | TypeScript | JavaScript(JSX) | JavaScript/TS |
特徴 | DI/HTTP/ルーティング内蔵 | 必要な機能を後付け | 軽量・柔軟・学習コスト低 |
学習難易度 | 高 | 中 | 低〜中 |
Angularの最大の特徴は、アプリケーション開発に必要な機能が最初から揃っている「オールインワン」構成であることです。
設定が厳格である分、品質の高いコードベースが保たれやすいのも利点です。
※ Angularは構造が厳密で堅牢性重視、React/Vueは柔軟性と拡張性を重視する傾向があります。
SPAとは何か?
Angularが主に開発対象とするのが、SPA(Single Page Application)です。
SPAとは、1つのHTMLページ上で動的にコンテンツを切り替え、ページ遷移を伴わずにアプリのような操作体験を提供するWebアプリケーションのことです。
例えば、ユーザーがログインページからダッシュボードへ移動したとき、従来のWebアプリではページ全体を再読み込みしていましたが、SPAでは必要なコンテンツだけを取得し、部分的に画面を書き換えることで高速なレスポンスを実現します。
AngularはこのSPA開発に特化しており、ルーティング、状態管理、非同期通信(HTTP)、フォームバリデーションなどがすべて内包されているため、個別のライブラリを導入することなく、堅牢なSPAを開発することが可能です。
Angularのアーキテクチャ:3つの柱
Angularの基本構成は、コンポーネント(Component)、サービス(Service)、モジュール(Module)の3つを中心に設計されています。
1. コンポーネント(Component)
コンポーネントはAngularアプリのUIを構成する最小単位です。
各画面要素(ヘッダー、フォーム、リストなど)をコンポーネントとして定義し、再利用可能な部品として組み合わせていきます。
// シンプルなコンポーネントの例
import { Component } from '@angular/core';
@Component({
selector: 'app-hello',
template: '<h1>こんにちは!</h1>'
})
export class HelloComponent {}
コンポーネントは3つの要素で構成されます:
テンプレート(HTML)、クラス(ロジック)、スタイル(CSS)。
これにより、UIとロジックを一体化した効率的な開発が可能です。
2. サービス(Service)
サービスはビジネスロジックやデータ取得などの機能をコンポーネントから分離して定義するクラスです。
Angularは依存性注入(DI: Dependency Injection)に対応しており、複数のコンポーネントから同じサービスを安全に共有できます。
// サービスの例
import { Injectable } from '@angular/core';
@Injectable({ providedIn: 'root' })
export class UserService {
getUser() {
return {
name: 'Tanaka', role: 'Admin'
};
}
}
3. モジュール(Module)
モジュールは、関連するコンポーネントやサービスをまとめて管理する単位です。
アプリ全体のエントリポイントであるAppModule
をはじめ、機能ごとにモジュールを分けることで、スケーラビリティや保守性が向上します。
// モジュールの定義
import { NgModule } from '@angular/core';
import { BrowserModule } from '@angular/platform-browser';
import { AppComponent } from './app.component';
@NgModule({
declarations: [AppComponent],
imports: [BrowserModule], bootstrap: [AppComponent]
})
export class AppModule {}
Angularでは、こうした構造を通じて「宣言的・再利用可能・テストしやすい」コードが書けるように設計されています。
🧱 Angularアーキテクチャの構造図(イメージ図)
Angularのアプリケーション構造を視覚的に表すと、以下のような階層になります。
AppModule(アプリ全体のルートモジュール)
├── コンポーネント(UI単位)
│
├── HeaderComponent
│
├── UserListComponent
│
└── FooterComponent
│
├── サービス(ロジック層)
│
├── UserService(ユーザー情報管理)
│
└── AuthService(認証管理)
│
└── ルーティング(ページ遷移制御)
├── /login → LoginComponent
├── /dashboard → DashboardComponent
└── /users → UserListComponent
このように、Angularは役割ごとに明確にレイヤー分離されており、スケーラブルな構成を実現できます。
特にサービスとコンポーネントの分離が保守性を高める鍵です。
まとめ
Angularは、Googleが開発するTypeScriptベースのフルスタックフレームワークであり、SPA開発に必要な機能を全て備えた堅牢なアーキテクチャを提供しています。
ReactやVueと比較すると学習コストは高いものの、開発規模が大きくなるほど、その恩恵は大きくなります。
今後のチャプターでは、Angularの環境構築、実践的なコンポーネント設計、DIの活用方法など、より具体的なテクニックについて詳しく解説していきます。