自社開発、受託開発、SESの違いとは?~ITエンジニアが知っておくべき選択肢~

ITエンジニアとしてキャリアをスタートする際、働き方の選択肢として「自社開発」「受託開発」「SES(システムエンジニアリングサービス)」という3つの形態を耳にすることが多いでしょう。
それぞれの働き方には特徴やメリット・デメリットがあり、自分のスキルや目指すキャリアに適した選択をすることが重要です。本記事では、この3つの開発スタイルの違いについて詳しく解説します。

1. 自社開発

自社開発とは?

自社開発は、自社で提供するサービスや製品のためにシステムを開発し、運用までを行う形態です。
エンジニアとして直接自社の事業に関わるため、他の開発形態と比べて主体性や達成感が得やすいのが特徴です。

業務の流れ:一貫したプロセスで開発をリード

自社開発では、システムやサービスのライフサイクル全般を担当します。
これにより、エンジニアは開発だけでなく運用や改善にも深く関与することになります。

  • 企画・アイデア出し
    サービスの方向性を決める段階から参加することが多いです。
    たとえば、ECサイトを開発する場合、新たな機能(おすすめ商品の提案、ポイントシステムなど)のアイデアを提案できます。
  • 設計と開発
    具体的な仕様を設計し、コードに落とし込むフェーズ。
    自社開発では、技術選定やアーキテクチャ設計にも携わる機会があります。
  • テストとリリース
    作成したシステムが意図した通りに動作するかを確認。
    リリース後もユーザーからのフィードバックをもとに、継続的な改良を行います。
  • 運用・保守
    サービスがリリースされた後、エラーの修正や機能改善を行い、サービスの価値を高める仕事を担います。

例: 自社開発の実例

  • SaaS型サービス(例: クラウド会計ソフト)
    自社で開発した会計ソフトをクラウド上で提供し、継続的にアップデートする形態。
  • ECサイト(例: 自社ブランドの商品を販売するオンラインストア)
    商品管理や購入フローの設計、決済機能の導入を担当。

自社開発のメリット

1. 主体性のある開発

エンジニアが自社の事業に深く関わるため、自分の提案がそのままプロダクトに反映されることが多いです。
たとえば、UIの改善案や新機能の提案が即座に実現することがあります。

  • :
    ユーザーの動線を見直して「購入ボタン」を目立つ場所に移動させた結果、売上が大幅に向上するなど、成果がダイレクトに感じられる。

2. 長期的な成長機会

自社製品の改善に時間をかけられるため、腰を据えて技術を磨くことができます。
特に以下のようなスキルが身につきます:

  • 継続的インテグレーション/デプロイメント(CI/CD)の運用経験
  • パフォーマンス改善やスケーラビリティの追求

3. 働き方が安定しやすい

開発スケジュールが自社でコントロールできるため、受託開発のようなタイトな納期やSESのような常駐先でのトラブルが起こりにくいです。
また、出張や異動が少なく、腰を据えて働ける環境が多いです。

2.受託開発

受託開発とは?

受託開発は、クライアント企業からの依頼を受け、特定のシステムやアプリケーションを開発する形態です。
プロジェクト単位で契約が行われ、完成したシステムを納品することで契約が終了します。
企業が持つ課題やニーズを解決するため、柔軟な対応力と専門的なスキルが求められます。

業務の流れ: クライアントと協力して進めるプロセス

受託開発のワークフローは、クライアントの要望に応じて進められます。
エンジニアは開発だけでなく、要件定義や提案など、クライアントと密接に関わる部分が多いのが特徴です。

  1. 要件ヒアリング
    クライアントの課題や要望を聞き取り、システムの仕様を明確にします。
    この段階でのコミュニケーションがプロジェクトの成否を左右します。
    •例:
    「在庫管理を効率化するシステムが欲しい」といった要望を分析し、具体的な機能に落とし込む。
  2. 提案・設計
    ヒアリング内容をもとに、技術的な提案やUI/UX設計を行います。
    • 例:
    在庫管理システムのデータベース設計や、管理画面のインターフェース案を作成。
  3. 開発とテスト
    合意された仕様に基づいてシステムを構築し、テストを通じてバグを修正します。
    クライアントと進捗確認を行いながら進めることが多いです。
  4. 納品
    完成したシステムを納品し、クライアントに引き渡します。
    必要に応じてトレーニングや操作マニュアルの提供も行います。

例: 受託開発の実例

  • 業務管理システム
    特定の業界(物流業、製造業など)向けに、業務効率を高めるための管理システムを構築。
    • 例: 製品のトレーサビリティを追跡するシステム。
  • ECサイト開発
    中小企業のオンライン販売をサポートするため、カスタマイズ可能なECサイトを開発。
    • 例: オリジナルブランドのファッション商品を販売するためのサイト構築。

受託開発のメリット

1. 多様なプロジェクト経験

受託開発では業界や技術分野を問わず、幅広いプロジェクトに携わることができます。
これにより、技術スキルや業務知識が多方面で鍛えられるメリットがあります。

  • :
    金融業界向けのシステムでセキュリティ要件を学び、次のプロジェクトではECサイトのUX設計を担当するなど、異なる分野での経験が得られる。

2. 対外的なスキル向上

クライアントと直接やり取りする場面が多いため、以下のスキルが磨かれます:

  • コミュニケーション能力(要件ヒアリング、プレゼンテーション)
  • 提案力(クライアントの課題に最適な技術や設計を提案する力)

3. 収益モデルの安定性

受託開発を手掛ける企業は複数のクライアントを抱えているため、一つのクライアントが離れた場合でも収益が大きく影響を受けにくいです。
また、プロジェクト単位の契約で収益を確保しやすいのも特徴です。

3.SES(システムエンジニアリングサービス)

SESとは?

SES(システムエンジニアリングサービス)は、SES企業に所属するエンジニアがクライアント先に常駐してプロジェクトに参加する働き方です。
プロジェクト単位で作業内容が決まり、開発から運用保守、さらにはサポート業務まで幅広い役割を担うことが特徴です。

業務の流れ: クライアント先でのプロジェクト参画

SESでは、SES企業がクライアント企業と契約を結び、その契約内容に基づいてエンジニアがクライアント先でプロジェクトに参加します。
以下が一般的な流れです。

  1. 案件の選定
    SES企業が保有する案件リストから、エンジニアのスキルや希望に合うプロジェクトを選定します。
  2. 常駐先での業務開始
    クライアント先のプロジェクトチームに参加し、具体的な業務を担当します。
    • 例:
    Webアプリケーションの機能開発、サーバー運用、システムのトラブルシューティング。
  3. 契約期間の終了
    プロジェクトが終了する、もしくは契約期間が満了すると常駐先を離れます。
    その後、新たな案件に参画します。

例: SESの実例

  • 大手ECサイトの新規機能開発
    クライアント先で、既存のECサイトに「レコメンド機能」を追加する開発チームに参加。
  • 金融システムの運用保守
    銀行のシステム監視や障害対応を担当し、安定稼働をサポート。

SESのメリット

1. 豊富な実務経験

SESでは、クライアント先での開発や運用に従事するため、大規模なプロジェクトに参加する機会が多くあります。
特に大手企業では、高い技術力が求められる場面が多く、エンジニアとして大きな成長を遂げることが可能です。

大手企業でのプロジェクト例
  • クラウドインフラ構築
    AWSやAzureなどのクラウドサービスを活用した大規模なインフラ設計・構築に携わることがあります。
    具体例:
    大手ECサイトのインフラを、クラウド上でスケーラブルに構築し、負荷の増減に柔軟に対応するシステムを実現。
  • 業界を代表するシステムの開発
    金融業界や通信業界の基幹システムに関わり、高い信頼性とパフォーマンスが求められる開発を担当。
    具体例:
    大手銀行の決済システムのパフォーマンスチューニングを行い、処理速度を大幅に改善。
短期間で得られるスキル
  • 最新技術:
    コンテナ技術(Docker、Kubernetes)やDevOpsのツール(Jenkins、Ansible)を使用した経験。
  • 大規模プロジェクトのノウハウ:
    数百人規模のチームでの役割分担や、効率的な進行管理の方法を学べます。

2. 多様な人脈

SESでは、様々なクライアント先やプロジェクトチームで働くため、多くのエンジニアや関係者との交流があります。
この人脈は、技術の相談やキャリアアップに役立つだけでなく、次のプロジェクトや転職の際にも有利に働きます。

人脈が広がる具体例
  • プロジェクトメンバーとのつながり
    大手企業のプロジェクトに参加することで、その企業のエンジニアや他のSESエンジニアと知り合いになれます。
    :
    プロジェクト終了後も技術的な相談をする仲間が増え、情報交換ができる環境が整う。
  • キャリアの幅を広げる
    SESでの人脈を活かし、フリーランスや自社開発企業への転職につなげることも可能です。
    :
    大手企業で一緒に働いたエンジニアから転職の誘いを受け、新しいキャリアに挑戦。

3. 柔軟な働き方

SESの特徴として、契約期間ごとに新しいプロジェクトを選ぶことができる点が挙げられます。
これにより、自分の興味やスキルに合った仕事を見つけやすく、幅広い経験を積むことができます。

プロジェクト選択の自由度
  • 興味のある分野に挑戦できる
    契約が終了するごとに、SES企業から次の案件を提案されるため、自分が成長したい分野や新しい技術に挑戦できます。
    :
    Webアプリ開発を経て、次のプロジェクトではAIやデータ分析の案件に挑戦。
  • 自分のペースで働ける
    案件の選定時に希望を出せるため、繁忙期を避けたり、勤務地を選んだりすることが可能です。

キャリアチェンジのしやすさ

SESの働き方を活かし、自分に合ったキャリアを柔軟に模索することができます。

  • :
    SESで経験を積んだ後、自社開発企業や受託開発企業に転職し、キャリアの幅を広げる。

まとめ

「自社開発」「受託開発」「SES」のどれを選ぶべきかは、自分のキャリアビジョンやスキル、働き方の好みによって異なります。
たとえば、自分のアイデアを形にすることを目指すなら自社開発が適しており、幅広い技術や業界に触れたいなら受託開発やSESが向いています。
それぞれのメリットを理解し、キャリアの方向性に合った選択をしましょう。

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