ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業全体の業務を効率化し、一元管理を実現するための重要なシステムです。しかし、その導入や選び方、他のシステムとの違いを理解することは容易ではありません。
本記事では、ERPの基本的な概要から導入のメリット・デメリット、選定ポイント、運用方法までをわかりやすく解説します。
<目次>
ERPとは? 簡単にわかりやすく解説
ERPとは「Enterprise Resource Planning」を略した言い方で、「企業資源計画」とも言われ、元々、企業が持つ「人」「物」「お金」「情報」などを、効率的に活用するための考え方や管理手法を指します。この考え方では、企業全体の資源を最適に使うために、それらを一元管理することが重要だとされています。
そして、この考え方を実際の業務で実現するために作られたソフトフェアが「ERPシステム」です。つまり、「ERPシステム」とは、ERPの考え方を実現するためのツールであり、企業の情報を一つの場所でまとめて管理するための実際のソフトフェアです。
近年では、ERPという言葉が実際のシステムや「ERPパッケージ」を指すことが一般的になり、下記のようにも呼ばれます。
それではこのERPという管理手法および考え方はどのようにして始まったのでしょうか。
ERPの由来
ERPの由来は、「MRP(Material Requirements Planning:資材所要量計画)」という生産管理の手法にあります。MRPは製造業で、必要な資材を効率よく調達・製造し、生産効率をあげるための生産管理の考え方でした。
このMRPがさらに発展し、企業全体の「ヒト」「モノ」「カネ」などのリソースを効率的に活用し、企業の経営全体を最適化するという考え方が生まれました。これがERPの始まりです。
1990年代になると、ERPシステムは欧米で普及し始め、財務や人事、販売、在庫管理といった企業の主要な業務を一つのシステムで管理する統合ソリューションとして広まっていきました。これにより、企業の経営効率や競争力を向上させることが可能になり、世界中の企業で導入が進みました。
ERPは単なるシステムではなく、企業の経営を効率化し、全体の生産性を向上させるための重要な経営戦略の一部といえます。このため、ERPの導入は企業の成長や競争力強化に直結するものとして、多くの企業で活用されています。
日本でも、2000年代に入ってからERPが導入され始め、現在ではクラウド型ERPなどの普及により、大企業から中小企業まで幅広い企業がERPを導入するようになっています。
このような背景を踏まえ、ERPシステムが企業にとって必要な理由をもう少し掘り下げて説明します。
ERPが必要な理由
ERPシステムが必要な理由は、企業が持つ情報を統一して管理し、業務の効率化を図るためです。このシステムを導入することによって、企業内のさまざまな部門が発信する情報を一元化し、円滑な情報共有を実現し効率性を高めます。これにより、各部門がリアルタイムで必要な情報にアクセスでき、業務の進行がスムーズになります。
一方で、こうしたシステムがない場合、さまざまな部署の情報が別々のシステムで管理される場合、データの整合性が損なわれたり、情報が分散してしまうことが起こります。また複数のシステムを使用することで、社員に過剰な負担がかかり、ミスが発生しやすくなるリスクも高まります。最終的にはこれが生産性の低下を招き、経営効率や競争力を損なう要因となってしまいます。
こうした課題を解消するために、ERPシステムの導入は企業にとって重要な役割を果たす存在になっています。このようなERPシステムですが、どのようなパッケージ(システム)があるのでしょうか。
ERPパッケージ例:企業のご紹介
ERPを導入する際には、さまざまなERPパッケージ(システム)が利用可能です。それぞれのパッケージには異なる特徴や機能があり、自社の業務内容や規模に合ったものを選択することが重要になってきます。以下に、ERPパッケージERP開発などのサービス提供している企業をご紹介します。
・テンファイブ
テンファイブはERPの開発やカスタマイズに特化した企業であり、特に大手ベンダーから高い信頼を受けている長年の実績を持ちます。IT技術に精通しているだけでなく、金融機関レベルの高度なセキュリティ技術を備えているため、安心してシステム導入を任せられるパートナーです。
上流工程から下流工程まで、一貫してプロジェクトに携わることができる環境を整えており、大手ITベンダーからも高い評価を受けています。少数精鋭のプロフェッショナル集団で、金融機関基準の高いセキュリティに準拠したシステム設計や運用に強みを発揮しており、複雑な業務要件にも柔軟に対応することが可能です。
・InfiniOne
InfiniOneは、食品、建材、金属、機械など多様な業種に対応するカスタマイズ型ERPとして知られています。最大の特徴は、専任のサポート部門による手厚いサポート体制です。製品知識に精通したサポート専任部門が、お客様の大切なシステムをしっかりとサポートし、「顔が見えるサポート」をモットーにしています。
問い合わせは一元管理され、常に状況が見える化されているため、お客様は安心してシステムを利用できます。さらに、システムの保守だけでなく、システムの活用方法に関する相談や、企業の成長に合わせた機能拡張のサポートも提供しています。InfiniOneは、サポート重視の姿勢で企業の業務効率化や成長をしっかりとサポートするERPソリューションです。
・OBIC7
OBIC7は、業界に精通した経験豊富なSEが、企画、設計、導入、運用・保守まで一貫したサービスを提供するERPシステムです。特徴的なのは、クラウドアカデミーによる本番同様の事前研修を通じて、早期の安定稼働と高い可用性を実現している点です。
また、徹底したBCP(事業継続計画)対策や法改正にも柔軟に対応できるため、時代の変化に適応しやすいのが大きな魅力です。さらに、複合業務ソリューションによりビジネスの拡大に迅速に対応できるほか、顧客独自の要件にも対応するプライベートクラウドを活用し、企業の事業を完全にサポートします。OBIC7は、ビジネス成長をサポートする柔軟性と専門性を兼ね備えたERPシステムです。
・GRANDIT
GRANDITは、企業規模や業務特性に合わせて段階的に機能追加が可能なスケーラブルなERPシステムです。14社のコンソーシアム方式で運営され、各社のノウハウが反映されているため、多様な業種や業態に対応できる高い柔軟性を持っています。
また、電子承認やデータ分析、Web受発注などの機能がオールインワンで統合されており、会計や販売、生産管理、人事給与など全機能を完全統合。日本の企業文化に適した純国産ERPとして、効率的かつ使いやすいシステムを提供しています。
ERPと他システムの違い
ERPは企業全体の経営資源を一元管理し、効率化を図るためのシステムですが、基幹システムやSAP、CRMなどのシステムは、それぞれ異なる目的や役割を持っていますが、ERPとは何が違うのでしょうか?よく混同されるERPと他のシステムの違いについて詳しく解説します。
・基幹システムとの違い
基幹システムとは、企業の中で行われる「会計」「人事」「販売」「生産管理」など、各部門の主要な業務を効率化するためのシステムであり、たとえば販売部門では「販売管理システム」、人事部門では「人事システム」を使って業務をサポートします。
しかし、これらのシステムは部門ごとに独立して動いているため、情報の連携が必要な場合には手作業や別の方法でデータをやり取りする必要があります。
一方、ERPは、企業全体の「ヒト・モノ・カネ・情報」を一つのシステムでまとめて管理するソフトウェアであり、これにより部門ごとに分かれていた情報をリアルタイムで一元的に見ることができ、全体の効率化が可能となります。
ERPと基幹システムは一見似ているように思われますが、役割や機能に大きな違いがあります。
項目 | 基幹システム | ERP |
---|---|---|
目的 | 特定の部門・業務を効率化するため | 会社全体の業務を一元管理して効率化 |
管理範囲 | 部門ごとに独立している | 会社全体を横断して管理 |
データ連携 | 各システム間でデータのやりとりが必要 | データが一つにまとめられている |
導入の手間 | 比較的短期間で導入可能 | 全社導入のため準備が必要 |
カスタマイズ | 業務ごとに簡単に調整が可能 | 全体に合わせて調整が必要 |
ERPは情報共有と意思決定が速くなることで、時間やコスト削減、生産性向上、最終的な売上や利益増加につながります。一方、基幹システムは特定の業務効率化に適ししています。
項目別で比較すると、基幹システムは特定の部門・業務を効率化し、ERPは会社全体を一元管理して効率化を図り、データ連携もERPは一元的にまとめてリアルタイムで連携が可能なのに対し、基幹システムはシステム間のやり取りが必要であるため、両者には目的や管理範囲、導入の手間などに大きな違いがあります。
・SAPとの違い
SAPは、ERPを実現するためのソフトウェアを提供する企業であり、その製品自体も一般的に「SAP」と呼ばれています。ここで重要なのは、ERPとSAPは異なるものであるという点です。
ERPは経営資源を管理するための考え方やシステムの総称であり、SAPはその中でも代表的なERPパッケージの一つです。言い換えれば、ERPというカテゴリーの中にSAPが含まれているということです。
また、SAPはドイツに本社を置くSAP社が提供するERPパッケージの名称でもあり、「Systems, Applications, and Products in Data Processing(システム、アプリケーション、データ処理のための製品)」の略称です。1972年に設立されたSAP社は、企業の基幹業務を支えるソリューションを開発・提供してきました。
・CRMとの違い
CRMは「顧客関係管理」の略で、顧客との関係を深めるためのシステムです。主な目的は、顧客情報を一元管理し、営業、マーケティング、カスタマーサポート部門がより効果的に顧客との関係を維持・発展させることです。顧客の購入履歴や問い合わせ履歴、商談の進捗状況を管理することで、顧客満足度の向上や売上増加、リピート率の向上を目指します。
多くの企業では、ERPとCRMを連携させることで社内業務の効率化と顧客対応の強化を同時に実現しています。例えば、CRMで得られた顧客情報をERPに取り込み、在庫状況や受注履歴と連携させることで、迅速で的確な顧客対応や販売戦略の策定が可能になります。
このように、ERPとCRMはどちらも企業の効率化や成長を促進するための重要なツールですが、それぞれ異なる役割を持っています。ERPは主に経営資源を管理するシステムであり、CRMは顧客との関係を管理するためのシステムです。相互に補完的な関係にあるものの、役割は異なります。
項目 | ERP | CRM |
---|---|---|
目的 | 企業全体の業務プロセスを統合・効率化 | 顧客との関係性を管理・強化 |
対象データ | 財務、人事、在庫、購買、製造など | 顧客情報、商談履歴、問い合わせ、購買履歴など |
使用部門 | 財務、調達、生産、人事、物流などのバックオフィス | 営業、マーケティング、カスタマーサポートなどのフロントオフィス |
対応範囲 | 企業全体の業務を統合的に管理 | 顧客に関連する情報を中心に管理 |
導入目的 | 組織全体の効率化、コスト削減、データ共有 | 顧客満足度向上、売上増加、顧客リテンションの向上 |
ERPの主な機能
RPは、企業の効率化や経営判断をサポートするために多彩な機能を備えています。事業規模・業種によって、基幹システムに求められる重要度は様々ですが、多くの企業様に求められる基本的な実装機能の一部をご紹介します。
これらの機能は企業の業務を円滑に進める一例ですが、ERPはさらに多様な機能を開発できるため、自社に合わせた柔軟なカスタマイズが可能です。どのような機能が開発できるのか、さらに詳しく知りたい方は下記をご覧ください。貴社のビジネスに活かすヒントになるかもしれません。
ERPの導入形態・開発方法・パッケージ種類
ERPシステムは企業ごとのニーズに応じて、さまざまな導入形態や開発手法が用意されています。以下のポイントから、自社に最適なERPソリューションを選ぶことが重要になってきます。
これらの要素を理解することで、より効果的なERP導入が可能になりますので、それぞれご紹介します。
1.導入形態の特徴とメリット・デメリット:クラウド型・オンプレミス型
まず、ERPのシステムを構築するかの違いで「クラウド型」「オンプレミス型」に分かれます。一般的に、インターネット上の「クラウド型」と自社サーバー構築の「オンプレミス型」が主流です。またこれらを組み合わせた「ハイブリッド型」もあります。
クラウド型ERPと比較すると、オンプレミス型は初期費用や運用コストは高いものの、高いカスタマイズ性とセキュリティの安心感が特徴です。一方、クラウド型は導入が容易で、初期費用が抑えられる点が魅力です。
ERPサーバーの導入形態 | 構築場所 |
---|---|
クラウド(サブスクリプション)型 | インターネットサーバー |
オンプレミス型 | 自社サーバー |
クラウド型・オンプレミス型のそれぞれの特徴、メリット、デメリットを詳しくご説明します。
・クラウド(サブスクリプション)型ERP
クラウドERPは、サービス提供企業がクラウド環境に構築したシステムにアクセスして利用する形態です。自社でサーバーを用意する必要がなく、アップデートも自動で行われるため、管理負担が軽減されます。
初期費用が低く、迅速に導入できるため、中小企業やITリソースが限られている企業に適しています。ただし、セキュリティやカスタマイズ性は慎重な検討が必要です。
・オンプレミス型ERP
オンプレミス型ERPとは、企業が自社内にサーバーやネットワーク機器などを設置し、ERPシステムをインストールして運用するタイプのERPシステムです。導入当初からクラウド型が登場するまでは、ほとんどの企業がオンプレミス型を採用してきた歴史があります。
オンプレミス型ERPは、独自のビジネスプロセスを持ち、システムの高度なカスタマイズが必要な企業に向いています。また、セキュリティ面を重視する企業や、自社のシステムを完全にコントロールしたい大企業にも適しています。特に、インターネット環境に左右されず、自社で可用性やセキュリティを徹底したい場合は、オンプレミス型ERPが適した選択となるでしょう。
2.開発方法の特徴とメリット・デメリット
ERPシステムの開発方法には、主に「パッケージ型」「フルスクラッチ型」「オープンソース型」の3つがあります。パッケージ型は、あらかじめ用意された既製ソフトウェアを企業が導入する形態で、幅広い業界ニーズに対応可能です。フルスクラッチ型は、企業独自の要件に完全に合わせたオーダーメイドのシステムを構築します。そして、オープンソース型は、自社でシステム構築する、自由にカスタマイズできる柔軟性があります。
開発方法 | 特徴 |
---|---|
パッケージ型 | 既製ソフトウェア |
フルスクラッチ型 | オーダーメイド |
オープンソース型 | 自社でシステム構築 |
それぞれの開発方法には独自のメリットとデメリットがあり、自社の業務や予算に応じた適切に選択することが重要になってきます。ここでは、各開発方法の特徴を詳しく説明します。
・パッケージ型ERP
パッケージ型ERPとは、提供元があらかじめ用意した既製ソフトウェアを企業に提供する形態のERPシステムです。一般的な企業活動に必要な機能が幅広く標準搭載されているため、さまざまな業界・業種に対応できるのが特徴です。導入形態としては統合型・コンポーネント型に分けられ、企業のニーズに応じて適切な選択が可能です。
・フルスクラッチ型ERP
フルスクラッチ型ERPは、オーダーメイドで自社専用のシステムを構築できるため、独自の業務プロセスやニーズに最適なERPシステムを導入できます。ただし、その自由度の高さに伴い、コストや開発期間が大幅にかかるため、大企業や業務プロセスにこだわりのある企業に適しています。導入を検討する際は、自社の要件と費用対効果を慎重に検討することが重要です。
・オープンソース型ERP
オープンソース型ERPは、ソフトウェアのソースコードが公開されているため、ユーザーが自由に改良やカスタマイズができるERPシステムです。一般的に無料で使用できるため、導入コストを抑えることが可能です。
3.パッケージ種類の特徴とメリット・デメリット
ERPのパッケージ種類には、主に「統合型ERP」「コンポーネント型ERP」「業務ソフト型ERP」があります。これらはそれぞれ異なる特性を持ち、企業のニーズや規模に応じて選択することができます。特に、業務全体を一元管理する統合型は、迅速な情報共有と経営判断を支援しますが、導入コストが高くなる傾向があります。
一方、コンポーネント型は必要な機能を柔軟に選択でき、企業の成長に合わせた拡張が可能です。しかし、全社的なデータ統合に課題が残る場合もあります。また、特定の業務に特化した業務ソフト型は、導入の容易さが魅力ですが、全体管理には限界があるため注意が必要です。
パッケージ種類 | 一元管理の範囲 |
---|---|
統合型 | 企業経営に関連する業務機能を網羅して一元管理 |
コンポーネント型 | 企業の業務に必要な機能だけを選択して一元管理 |
業務ソフト型 | 特定の業務や部門に特化して一元管理 |
各パッケージの特徴とそのメリット・デメリットについて詳しく見ていきましょう。
・統合型ERP
統合型ERPは、企業経営に関連する業務機能を網羅しており、業務を一元管理することでリアルタイムに情報を共有できます。このため、業務効率の向上や迅速な経営判断に非常に効果的です。ただし、導入コストや時間、カスタマイズの難易度を考慮する必要があります。大規模な企業や、複数の部門で情報を共有する必要がある企業におすすめです。
・コンポーネント型ERP
コンポーネント型ERPは、企業の業務に必要な機能だけを選択・導入できる柔軟なERPシステムです。会計、販売、人事などの業務に合わせてコンポーネント(部品)を組み合わせることができるため、企業の規模や成長に合わせて拡張性が高く、効率的なシステム構築が可能です。
・業務ソフト型ERP
業務ソフト型ERPは、特定の業務や部門に特化して一元管理を行うためのシステムです。例えば、発注管理や管理会計、生産管理、顧客管理などの特定の分野での効率化を目的としたERP導入が該当します。この形態は、特定業務の改善にフォーカスしたい小規模企業や予算が限られている企業に適しており、他のERP導入形態と比較して初期費用を抑えられ、短期間で導入できるのが特徴です。
ERP導入のメリット・デメリット
ERP導入の最大のメリットは、企業内の情報を一元管理し、業務効率を大幅に向上させる点です。これにより、経営判断の迅速化やコスト削減、部門間の連携強化など、さまざまな効果が期待できます。
しかし、その一方で、初期導入コストやシステム選定の難しさ、導入までの時間がかかるといったデメリットも存在します。ERP導入のメリットとデメリットを詳しく解説します。
・ERP導入のメリット
ERPの導入は、企業が直面するさまざまな課題を解決し、業務の効率化や経営判断の迅速化を実現するための効力なシステムです。情報を一元管理することで、リアルタイムなデータの把握が可能となり、部門間の連携も強化されます。
また生産性の向上やコスト削減、さらにはコンプライアンス強化といった多岐にわたるメリットを享受できるため、企業全体の競争力を高めることが期待できます。主なメリットは以下に挙げます。
これらについて具体的なメリットを見ていきましょう。
1. 統合データ管理
ERPシステムの導入による最大のメリットの一つは、統合されたデータ管理です。ERPは、会計、販売、製造、人事、購買など、さまざまなビジネスプロセスのデータを一つのデータベースに集約します。その結果、データの重複や入力ミスが減少し、各部門が一貫性のある情報を共有できるようになります。
例えば、販売部門が顧客からの注文を受けると同時に、在庫管理システムはリアルタイムで在庫を更新し、購買部門は必要に応じて新しい発注を行うことが可能になります。この統合データ管理により、情報の透明性が向上し、全社的な情報共有が実現されます。
2. 業務プロセスの効率化
RPは業務プロセスを標準化し、自動化することで日常業務を効率化します。手作業によるデータ入力の手間を減らすことで、時間と労力を節約し、エラーのリスクも低減します。また、ERPシステムは繰り返し発生する業務の自動化を可能にし、従業員がより付加価値の高い業務に専念できる環境を整えます。
例えば、ERPシステムは請求書の自動生成や支払い処理、給与計算などの多くの財務関連業務を効率的に自動化します。
3. 意思決定の迅速化
ERPシステムはリアルタイムでデータにアクセスできるため、経営陣は迅速で情報に基づいた意思決定を行うことが可能です。統合データベースにより、必要な情報を即座に入手できるため、市場の変化やビジネスチャンスに素早く対応できます。
さらに、レポートやダッシュボードを活用することで、企業の現状を正確に把握し、戦略的な計画や実行をサポートします。これにより、競争力を維持しながら、長期的な成長を実現することが可能です。
4. コンプライアンス強化と内部統制
ERPは企業内のデータを一元管理するため、アクセス権限の管理やログ記録が可能です。これにより、不正行為の防止や内部統制の強化が図られ、コンプライアンスに対応しやすくなります。また、ERPのセキュリティ機能によりデータの漏洩リスクを低減でき、企業の信頼性向上にもつながります。
5. コスト削減
ERP導入により、データの入力や管理にかかる手間が削減されることで業務効率が向上します。これにより、人件費やペーパーレス化によるコスト削減が期待できます。また、ERPによる業務の自動化や効率化により、経費全体の削減も実現できます。
6. 部門間連携の強化
ERPは部門ごとに独立していたシステムを統合するため、各部門間の連携が強化されます。情報の共有や伝達がスムーズになり、部門間の連携ミスを防げます。これにより、ビジネスプロセス全体の効率が向上し、顧客対応力も強化されます。
7. ベンダーの他社ノウハウ活用
多くのERPベンダーは成功企業のノウハウなどを製品に反映させています。ERPを導入することで、他社の成功事例を活用し、自社の業務に適用することが可能です。
・ERP導入のデメリットと対策
ERPの導入には、多くの利点がある一方で、企業が直面する可能性のあるデメリットも存在します。特に、初期導入コストの高さや長い導入リードタイムは、中小企業にとって大きな経済的負担となることがあります。
また、既存の業務プロセスを変更する必要があるため、従業員が新しいシステムに適応するまでの時間やサポートが必要です。その他システム選定の難しさやセキュリティリスクも慎重に考慮する必要があります。これらのデメリットを理解し、適切な対策を講じることで、リスクを最小限に抑えることができます。以下に主なデメリットを挙げます。
それでは、具体的なデメリットについて詳しく見ていきましょう。
1. 初期導入コストの問題
RPシステムの導入にはソフトウェアライセンスやカスタマイズ、従業員トレーニング、データ移行、維持管理など多くの費用がかかり、高額な初期投資が必要です。このため、導入前に詳細なコスト分析と予算計画を行い、予期せぬ出費を避けることが重要です。
また、全社一斉導入ではなく段階的な導入で初期コストを分散させる方法が効果的です。初期費用を抑えたい場合には、初期投資の少ないクラウド型ERPを検討することで、費用面の負担を軽減できます。
2. 導入リードタイムの長さ
ERPの導入には時間がかかります。システムの選定から導入、カスタマイズ、テスト、トレーニングなど、多くの工程が必要です。さらに、既存のシステムと統合したりデータを移行したりするのにも手間がかかるため、導入計画を立てる際には時間を十分に考慮しましょう。
3. 従業員への教育やサポート体制
ERPを導入する際、既存の業務プロセスを新しいシステムに合わせる必要があることがあります。これにより、従業員が新しいシステムに慣れるまで時間がかかり、抵抗感を感じることもあります。事前に従業員への教育やサポート体制を整えることが重要になってきます。
4. 運用の複雑さ
ERP製品は多種多様で、企業の規模や業種に合ったシステム選定は難しいため、必要な機能や信頼性のあるベンダーサポートを慎重に検討することが重要です。従業員には徹底したトレーニングを行い、システムの正しい使い方を習得させることで効果的な活用が可能になります。また、専門家のサポートを活用して導入を効率化し、使いやすいインターフェースを選ぶことで、従業員の抵抗感を軽減し運用効率を向上させることができます。
5. セキュリティリスク
ERPには企業の重要な情報が集まるため、セキュリティ対策が欠かせません。特にクラウド型ERPの場合、外部からの攻撃やデータ漏洩のリスクがあるため注意が必要です。セキュリティポリシーを整備し、定期的な監査やアップデートをおこなうことで、リスクを減らすことが求められます。
ERP導入費用と期間
ERPの導入は、企業の業務効率化や情報の一元管理に大きな効果をもたらします。しかし、その費用と期間は企業の規模、業種、導入範囲、カスタマイズの度合いなどによって大きく異なります。ここでは、具体的な金額や期間を示すのではなく、費用と期間に影響を与える要因や、抑えるためのポイントについて説明します。
・導入費用
ERP導入の費用は、「イニシャルコスト(導入時の初期費用)」と「ランニングコスト(導入後の維持費用)」の2つに分かれます。特に導入時のイニシャルコストは企業の業種や規模、導入するERPの種類によって大きく変動するため、これを正しく理解することが重要です。またイニシャルコストとランニングコストの3つの主な要素は以下のようになります。
イニシャルコストの主な要素 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
ライセンス費用 | ERPソフトウェアの利用権利にかかる費用(クラウド型とオンプレミス型で異なる) | クラウド型はユーザー毎のライセンス料が必要。オンプレミス型は一括購入が多い。 |
導入費用 | ERP導入の設定や設置、導入サポートにかかる費用 | 企業の規模によって変動。クラウド型は比較的安く抑えられることが多い。 |
開発費用 | 必要に応じた機能追加やカスタマイズのための費用 | 1つの機能追加でも大きな費用が発生することがある。クラウド型はカスタマイズが難しい。 |
ランニングコストの主な要素 | 内容 | ポイント |
---|---|---|
保守・サポート費用 | システムの運用後に発生するトラブル対応や定期メンテナンス、アップデートの費用 | ベンダーによってサポート内容や料金が異なるため、事前に確認が必要。 |
システム運用費用 | クラウド型の場合の月額利用料金やオンプレミス型のサーバー維持費、電気代、セキュリティ費用など | クラウド型は月額料金がかかるが、オンプレミス型は運用コストが長期的にかかる。 |
トレーニング・教育費 | システムを使用する従業員のスキルアップや新機能導入時のトレーニング費用 | 新機能追加やシステム変更時には定期的なトレーニングが必要。 |
ポイント1: ERPの種類(クラウド型 or オンプレミス型)で費用が変わる
クラウド型:ユーザーごとのライセンス費用が発生するものの、初期費用は比較的抑えられます。ただし、カスタマイズが難しいため、企業の業務プロセスをシステムに合わせる必要があります。
オンプレミス型:システムを一括購入するため初期費用が高額になりやすいですが、長期的には費用を抑えられるケースもあります。
ポイント2: 導入費用は企業の規模で変動する
大規模な企業ほど導入に手間がかかるため費用が増加します。一方で、小規模企業は比較的安く抑えられることが多いです。具体的な金額はベンダーに見積もりを依頼するのが確実です。
ポイント3: カスタマイズには高額な費用がかかる
カスタマイズや機能追加は1つの機能でも100万円以上かかることが一般的です。特にクラウド型ERPはカスタマイズの幅が限られるため、事前に自社の業務に合うか確認することが重要です。
・導入期間の目安
ERPの導入期間は、企業の規模や導入形態、カスタマイズの有無によって大きく異なります。中小・中堅企業の場合、一般的には6〜12ヶ月程度で導入が完了しますが、大企業では求める機能が多くなるため、12〜24ヶ月程度ほどかかることもあります。
クラウド型ERPの場合、システムを標準のままカスタマイズせずに導入する場合は、利用人数が5人程度で最短3ヶ月程度の導入も可能な範囲です。カスタマイズが少ない分、導入期間を短縮できる点がメリットです。
一方、オンプレミス型ERPでは、システム設計や機器調達を自社で行う必要があるため、導入までに1年から2年近くかかることも一般的です。特に大企業やカスタマイズが多い場合、時間が長くなる傾向にあります。
また、ERP導入は提案される機能や利用人数、追加のカスタマイズなどによっても期間が変動します。導入する機能が増えたり、システムの調整が必要になったりする場合は、期間がさらに長くなることもあります。
ERPの失敗しない選び方のポイント
ERPシステムの選定では、以下が重要になってきます。
これらをしっかりと検討することで、業務効率の向上やコスト削減、競争力の強化といったビジネス上のメリットを最大限に享受できます。それでは以下に、ERP選定時に考慮すべき重要な各ポイントを解説します。
・業種と業務特有の要件
企業ごとに求められるERPの機能は異なり、製造業であればサプライチェーン管理、小売業では在庫管理や顧客関係管理が重視されます。そのため、自社の業種に適した機能を持つERPを選ぶことが重要です。
対策としては、まず現在の業務プロセスを徹底的に分析し、課題を明確にします。次に、業種特有の機能を持つERPを選び、必要以上のカスタマイズを避けます。導入事例やデモを活用し、実際の運用に適しているかを確認することも有効です。
・柔軟で拡張性が高いシステムの拡張性
企業が成長や変化に対応するためには、ERPシステムが柔軟で拡張性が高いことが求められます。将来的なニーズに対応できるよう、新しい機能やユーザーを追加できるシステムを選ぶ必要があります。
対策として、将来のビジネス計画と整合性のあるシステムを選ぶことが大切です。また、モジュール式のアーキテクチャを持つERPを選ぶことで、必要に応じて機能を追加・削除できる柔軟性を確保できます。
・信頼できるサポート体制
ERPは複雑なシステムであるため、導入から運用までの適切なサポート体制が不可欠です。専門的なサポートがないと、トラブル発生時に業務が滞るリスクがあります。
対策として、ベンダーが提供するサポート内容やトラブル対応力を事前に確認します。また、定期的なメンテナンス契約を結ぶことで、システムの最新状態を維持し問題を早期に解決できます。さらに、ユーザーコミュニティに参加することで、他社の経験から学び、導入・運用に役立つ知識を得ることができます。
ERPを導入する流れ
ERPシステムの導入は、一般的には複数の段階を経て行われます。このプロセスは、企業のサイズ、カスタマイズのレベル、従業員のトレーニングの必要性などによって、数ヶ月から数年かかることがあります。
導入の成功は準備にかかっています。この段階では、企業はビジネスプロセスを評価し、システム要件を明確に定義し、導入計画を策定します。また、ERPベンダーとの協議を通じて、期待される成果とプロジェクトの範囲を確認しあいましょう。
それでは導入する流れを解説します。
1. ERP導入の目的と現状課題の明確化
最初に行うべきは、ERP導入の目的を明確にすることです。企業が抱える課題を洗い出し、ERPを導入することで何を解決したいのかを整理しましょう。この段階での目標設定が曖昧だと、導入プロセスで迷走する可能性があります。例えば、「情報の一元管理を実現したい」「業務プロセスを効率化したい」など、具体的な目的を定め、KPI(重要業績評価指標)も設定すると効果的です。
2. 導入プロジェクトチームの立ち上げ
次に、ERP導入を進めるプロジェクトチームを結成します。プロジェクトには各部門から代表者やIT担当者を選定し、全社的な視点で進められる体制を整えましょう。経営層に近い役職者を推進者にし、各部門のキーマンを巻き込むことで、導入のスムーズな進行が期待できます。
3. 現行業務フローの棚卸し
ERP導入にあたり、現在の業務フローを徹底的に棚卸しすることが必要です。どの業務が非効率なのか、どのプロセスに課題があるのかを把握し、どの部分をERPでカバーするべきかを明確化します。この作業はERPの導入範囲や必要な機能を決める基礎となるため、各部門と協力してしっかり行いましょう。
4. ERP導入後の新たな業務フローの構築
現状の棚卸しをもとに、新しい業務フローを策定します。ERPで業務プロセスをどのように最適化するかを検討し、カスタマイズの必要性も考慮して業務フローを再構築しましょう。この段階で業務の効率化を図り、ERPを最大限に活用できるようなフローを作り上げることが重要です。
5. 要件定義と予算設定
ERPに求める機能や性能を明確にするための要件定義を行います。要件定義では、各部門のニーズを取りまとめ、ERPに必要な機能やカスタマイズ要件を具体的にドキュメント化しましょう。同時に、導入にかかる予算を設定し、費用対効果を見極めた上で予算計画を立てることが重要です。
6. ベンダー・システムの選定
要件定義と予算をもとに、ERPベンダーと製品の選定を行います。ベンダー選定では、「機能面」「カスタマイズ性」「サポート体制」「セキュリティ」などを評価し、自社に最適なシステムを提供できるパートナーを見つけることが重要です。デモやトライアルを利用し、実際の使い勝手を確認するのも効果的です。
7. システムの導入とカスタマイズ
選定したERPベンダーと協力し、システムの導入とカスタマイズを進めます。自社の業務に合わせてシステムを最適化するため、プロジェクトチームとベンダーの間で緊密なコミュニケーションを取りながら作業を進めましょう。また、この段階で既存データの移行作業も行います。データの整合性を保つために、慎重な移行作業が必要です。
8. 試験運用とトレーニング
本番運用に入る前に、ERPの試験運用を行います。試験期間中は既存のシステムと並行して運用し、不具合や問題点を洗い出して修正を行います。また、従業員向けにトレーニングを実施し、システムの操作方法や新しい業務フローへの適応を促します。試験運用期間は1〜2か月程度が一般的ですが、企業規模に応じて調整しましょう。
9. 本番運用とサポート体制
試験運用で問題が解消されたら、本番運用に移行します。本番運用開始後は、従業員がスムーズにERPを使えるようにマニュアルを作成し、サポート体制を整えます。導入後もシステムのアップデートや改善を行いながら、業務効率化を継続的に進めることが重要です。
10. アフターサポートとメンテナンス
システムが稼働し始めた後も、継続的なサポートと定期的なメンテナンスが欠かせません。多くのERPベンダーは、トラブル発生時に迅速に対応するヘルプデスクサービスを提供しており、システムを常に最新の状態に保つための定期的なアップデートも重要です。