Angularアプリは、作って終わりではなく「継続的な開発・改善・運用」が求められます。
この章では、チームでの開発や長期運用に耐える設計戦略と、開発現場で活きる実践的な運用ノウハウを紹介します。

1. モジュール設計とスケーラビリティ
アプリケーションが大規模化するほど、モジュール分割と依存関係の整理が重要になります。
■ 推奨構成例
core/
:アプリ全体で1回だけ読み込むサービス・ガード・インターセプターなどshared/
:複数機能で共通利用されるコンポーネントやパイプfeatures/
:ドメインごとのFeature Module(ユーザー、商品など)
■ Barrel構成の活用
各モジュール内で index.ts
を用意し、モジュールやコンポーネントをまとめてexportすることで、
importがシンプルかつ保守しやすくなります。
例:features/user/index.ts
export * from './user.module';
export * from './user.component';
2. チームでの開発フロー
複数人で効率的に開発を進めるには、ルールとフローの明確化が不可欠です。
■ Git運用ルール(例)
- mainブランチ:常にデプロイ可能な状態
- developブランチ:開発の統合ブランチ
- feature/○○:機能ごとの作業ブランチ
- pull request:コードレビュー必須、CI自動実行
■ 開発ドキュメントの整備
- API仕様書(OpenAPI, Swagger)
- 設計資料(画面一覧、画面遷移、状態管理構成)
- README・ローカルセットアップ手順
ドキュメントはNotionやMarkdownなどで管理し、常に最新を保ちます。
3. コード品質と保守性の維持
■ LintとFormatter
統一されたコードスタイルは読みやすさと保守性に直結します。
ESLint
:構文ルールのチェックPrettier
:コード整形
CIでもLintチェックを自動実行することで、コードレビュー時の手間を大幅削減できます。
■ 単体テスト・E2Eテストの継続
変更の影響範囲を即時に把握するために、ユニットテスト(Jasmine/Karma)とE2Eテスト(Cypress)を維持し、CIに組み込みましょう。
4. エラーハンドリングとログ設計
■ グローバルエラー処理
アプリケーション全体で発生したエラーは、ErrorHandler
クラスを使ってキャッチ・ログ化します。
■ エラーログの送信
SentryやLogRocketなどを活用して、エラー発生時に即時通知・ダッシュボード化することで、ユーザー影響を最小限に抑えます。
5. 運用後の改善サイクル
リリース後も継続的に改善できるよう、以下のPDCAサイクルを意識しましょう。
- Plan:ユーザー要望・データ分析に基づく改善計画
- Do:小さな単位で改善実装
- Check:アクセス解析、エラー発生数、NPSなどで評価
- Act:仕様・設計・技術の改善提案へフィードバック
まとめ
Angularアプリを実務で活用していくためには、「作る力」だけでなく「運用し続ける力」が必要です。
モジュール設計・チーム開発フロー・コード品質・ログ設計・改善サイクルを意識することで、プロダクトとチームの持続的成長が可能になります。
Angularの開発は、単なる技術ではなく、組織の力を引き出す手段となり得ます。