「PMOはやめとけ」「PMOは意味がない」——インターネット上でこのような否定的な意見を目にしたことはありませんか?
しかし、これらの意見は本当に正しいのでしょうか。感情論や個人的な体験談ではなく、客観的なデータに基づいてPMOの市場価値と将来性を検証してみましょう。
本記事では、複数の信頼できるデータソースから収集した最新の市場データを分析し、PMOの真の価値を明らかにします。転職サイトの求人データ、フリーランス案件の単価情報、政府機関の統計データなど、様々な角度からPMOの現状と未来を数値で示していきます。
PMO正社員の年収実態
まず、PMO正社員の年収実態を見てみましょう。IT業界専門の転職サービス「レバテックキャリア」の実際の求人データ(195件)を分析した結果が以下のグラフです。

主要な発見事項
平均年収519万円、中央値550万円という結果は、日本の平均年収(約460万円)を大きく上回っています。特に注目すべきは以下の点です。
•400-500万円レンジが最多:62件の求人があり、PMOの標準的な年収レンジを示している
•600万円以上の高年収求人が豊富:全体の約37%(72件)が600万円以上
•1000万円以上の求人も存在:5件の超高年収求人があり、PMOの収入上限の高さを示している
この数値は「PMOは低収入」という一部の否定的な意見を明確に否定するものです。実際の求人市場では、PMOは十分に高い年収を期待できる職種であることがデータで証明されています。
他職種との比較
エンジニア全体の平均年収504万円と比較すると、PMOの平均年収519万円は14万円高く、PMOの市場価値の高さが裏付けられています。これは、PMOが単なる「雑用係」ではなく、専門性の高い職種として市場で評価されていることを示しています。
フリーランスPMOの収入ポテンシャル
PMOの真の収入ポテンシャルを理解するには、フリーランス市場の動向を見ることが重要です。フリーランス向け案件紹介サービス「フリーランススタート」の調査データ(総案件数10,133件)から、驚くべき実態が明らかになりました。

圧倒的な高単価市場
平均月額単価78.8万円、年収換算で945.6万円という数値は、正社員PMOの平均年収519万円の約1.8倍に相当します。分布を詳しく見ると:
•80-100万円/月が最多:全体の30%を占める最大のボリュームゾーン
•100万円/月超が約30%:3件に1件は月額100万円を超える高単価案件
•最高単価210万円/月:年収換算で2,520万円という超高収入も実現可能
なぜフリーランスPMOは高単価なのか
この高単価の背景には、以下の要因があります:
1.専門性の高さ:プロジェクト管理の専門知識と経験が求められる
2.即戦力性:企業は短期間で成果を出せる人材を求めている
3.需要と供給のバランス:優秀なPMO人材の不足により単価が上昇
4.責任の重さ:プロジェクト成功の鍵を握る重要なポジション
「PMOは誰でもできる仕事」という誤解がありますが、実際の市場では高度な専門性を持つ人材として高く評価されていることがデータで明確に示されています。
IT市場の成長とPMO需要の拡大
「PMOに将来性はない」という意見もありますが、市場データは全く逆の傾向を示しています。国際的な市場調査会社IDCによる国内ITサービス市場の成長予測を見てみましょう。

継続的な市場拡大
年平均成長率6.2%で成長し、2028年には8.82兆円に達するという予測は、IT業界全体の堅調な成長を示しています。この成長の背景には:
•DX(デジタルトランスフォーメーション)の加速
•AI・IoT・クラウド技術の普及
•企業のIT投資拡大
•新しいビジネスモデルの創出
PMO需要拡大の必然性
IT市場の拡大は、必然的にPMO需要の拡大につながります。なぜなら
1.プロジェクトの大規模化・複雑化:より高度なプロジェクト管理が必要
2.失敗許容度の低下:投資額の増大により、プロジェクト成功の重要性が高まる
3.ステークホルダーの多様化:複雑な関係者調整が必要
4.技術変化の加速:変化に対応できる柔軟なプロジェクト管理が求められる
厚生労働省の調査でも、PMが最も人材不足が深刻な職種として挙げられており、この傾向は今後も続くと予想されます。
長期的な安定性
一時的なブームではなく、構造的な変化に基づく需要拡大であるため、PMOのキャリアは長期的に安定していると言えるでしょう。「将来性がない」という懸念は、データを見る限り根拠のないものです。
雇用形態別年収比較:正社員 vs フリーランス
PMOのキャリアパスを考える上で重要なのが、雇用形態による年収の違いです。複数のデータソースを統合して作成した比較グラフをご覧ください。

スキルレベル別の年収レンジ
政府機関(厚生労働省・IPA)のデータに基づくITSSレベル別の年収は以下の通りです。
•ITSSレベル3:600-925万円(平均762.5万円)
•ITSSレベル4:675-950万円(平均812.5万円)
•ITSSレベル5以上:700-1,100万円(平均900万円)
フリーランスの圧倒的な優位性
グラフから明らかなように、フリーランスPMOは正社員の約1.8倍の年収を実現しています。
•正社員PMO(レバテック):519万円
•フリーランスPMO(平均):945.6万円
•フリーランスPMO(高単価):1,500万円以上
なぜこれほどの差が生まれるのか
この大きな年収差の理由は:
1.直接契約による中間マージンの排除
2.市場価値に基づく適正な価格設定
3.複数案件の並行実行による収入最大化
4.専門性に対する正当な評価
キャリア戦略への示唆
このデータは、PMOとしてのキャリア戦略に重要な示唆を与えます:
•正社員での経験積み上げ:まずは安定した環境でスキルを磨く
•段階的なスキルアップ:ITSSレベルの向上を目指す
•フリーランス転向の検討:十分な経験を積んだ後の選択肢として
「PMOは稼げない」という意見は、正社員の年収のみを見た偏った見方であり、フリーランス市場を含めた全体像を見れば、PMOは十分に高収入を期待できる職種であることが分かります。
PMO需要の急激な成長トレンド
市場全体の成長だけでなく、PMO職種そのものの需要がどのように変化しているかを見てみましょう。複数の求人サイトと案件紹介サービスのデータを分析した結果、驚くべき成長トレンドが明らかになりました。

驚異的な需要拡大
2020年を100とした場合、2025年には210まで成長という予測は、わずか5年間で需要が2.1倍になることを意味します。これは年平均約16%という驚異的な成長率です。
成長の背景要因
この急激な需要拡大の背景には、複数の要因が重なっています:
1. DXプロジェクトの急増
•コロナ禍を契機としたデジタル化の加速
•従来のビジネスモデルの見直し
•新しい働き方への対応
2. プロジェクトの複雑化
•マルチベンダー環境での開発増加
•アジャイル・DevOpsの普及
•クラウドネイティブ開発の拡大
3. 失敗コストの増大
•IT投資額の大型化
•競争環境の激化による失敗許容度の低下
•ステークホルダーの期待値上昇
4. 人材不足の深刻化
•経験豊富なPM・PMOの絶対的不足
•団塊世代の退職による知識・経験の流出
•新規参入者の育成が追いつかない状況
他職種との比較
同期間における他のIT職種の需要成長率と比較すると:
•一般的なエンジニア職:年平均5-8%成長
•PMO職:年平均16%成長
PMOの需要成長は、他職種を大きく上回るペースで進んでいることが分かります。
将来予測の信頼性
この成長トレンドは一時的なブームではなく、構造的な変化に基づいています:
•技術革新の継続:AI、IoT、ブロックチェーンなど新技術の実用化
•規制環境の変化:GDPR、個人情報保護法などへの対応
•グローバル化の進展:国際的なプロジェクトの増加
これらの要因は今後も継続するため、PMO需要の拡大トレンドは中長期的に持続すると予想されます。
経験年数別キャリアパスと年収向上
「PMOはキャリアアップが難しい」という意見もありますが、実際のデータは明確なキャリアパスと年収向上の可能性を示しています。経験年数別の年収レンジを分析した結果をご覧ください。

明確な年収向上パス
経験年数に応じて、以下のような段階的な年収向上が期待できます。
エントリーレベル(1-2年)
•年収レンジ:400-600万円(平均500万円)
•特徴:基本的なプロジェクト管理業務を担当
•必要スキル:Excel、PowerPoint、基本的なコミュニケーション能力
ミドルレベル(3-5年)
•年収レンジ:550-750万円(平均650万円)
•特徴:中規模プロジェクトの独立した管理
•必要スキル:プロジェクト管理ツール、ステークホルダー管理
シニアレベル(5-8年)
•年収レンジ:700-1,000万円(平均850万円)
•特徴:大規模プロジェクトのリード、チーム管理
•必要スキル:戦略的思考、リーダーシップ、業界知識
エキスパートレベル(8年以上)
•年収レンジ:900-1,500万円(平均1,200万円)
•特徴:複数プロジェクトの統括、組織変革の推進
•必要スキル:経営視点、変革管理、高度な専門性
キャリアアップの具体的な方法
1. 資格取得による専門性の証明
•PMP(Project Management Professional)
•プロジェクトマネージャー試験(情報処理技術者試験)
•PMO資格
2. 業界知識の深化
•特定業界への特化(金融、製造業、小売など)
•新技術領域への対応(AI、IoT、ブロックチェーン)
•規制対応の専門性(GDPR、SOX法など)
3. マネジメントスキルの向上
•チームリーダーシップ
•ステークホルダー管理
•変革管理(チェンジマネジメント)
4. 技術的理解の深化
•システム開発の理解
•アーキテクチャの知識
•新技術トレンドの把握
他職種との比較優位性
同じ経験年数の他職種と比較した場合のPMOの優位性:
•汎用性の高さ:業界を問わず活用できるスキル
•希少性:経験豊富なPMOの絶対的不足
•影響力の大きさ:プロジェクト成功に直結する重要な役割
•継続的な学習機会:常に新しいプロジェクトで成長できる
長期的なキャリア展望
PMOとしての経験は、以下のような上位職種への道筋も開きます:
•プロジェクトマネージャー
•プログラムマネージャー
•ITコンサルタント
•CIO(最高情報責任者)
•独立コンサルタント
「PMOはキャリアの行き止まり」という見方は完全に誤解であり、実際には多様で魅力的なキャリアパスが用意されていることがデータで明確に示されています。
まとめ:データが示すPMOの真の価値
本記事で紹介した6つのデータビジュアライゼーションは、「PMOやめとけ」論争に対する明確な答えを提供しています。感情論や個人的な体験談ではなく、客観的なデータに基づいて検証した結果、PMOは以下のような魅力的な職種であることが証明されました。
主要な発見事項の総括
1. 高い市場価値
•正社員平均年収519万円:日本の平均年収を大きく上回る
•フリーランス平均年収945.6万円:正社員の約1.8倍の収入ポテンシャル
•最高年収1,500万円以上:十分な経験とスキルがあれば超高収入も実現可能
2. 継続的な市場成長
•IT市場年平均成長率6.2%:2028年まで継続的な拡大予測
•PMO需要指数5年で2.1倍:他職種を大きく上回る需要拡大
•構造的な人材不足:長期的な安定性を保証
3. 明確なキャリアパス
•経験年数に応じた段階的な年収向上:エントリー500万円→エキスパート1,200万円
•多様な上位職種への道筋:PM、コンサルタント、CIOなど
•業界横断的なスキル:転職・転身の自由度が高い
「PMOやめとけ」論争への最終回答
データ分析の結果、「PMOやめとけ」という意見は以下の理由で根拠がないことが明らかになりました。
誤解1:「PMOは低収入」
事実:正社員でも平均519万円、フリーランスなら945.6万円の高収入
誤解2:「PMOに将来性がない」
事実:需要は5年で2.1倍に成長、IT市場拡大により長期的に安定
誤解3:「PMOはキャリアアップできない」
事実:経験に応じて明確な年収向上パス、多様な上位職種への道筋
誤解4:「PMOは誰でもできる仕事」
事実:高度な専門性が求められ、市場で高く評価される職種
PMOを目指すべき人の特徴
データ分析の結果、以下のような人にPMOは特に適していることが分かりました:
•安定した高収入を求める人
•継続的な成長とチャレンジを望む人
•多様な業界・技術に触れたい人
•将来的に独立・起業を考えている人
•マネジメントスキルを活かしたい人
成功するPMOになるための提言
短期的な戦略(1-3年)
1.基本スキルの習得:プロジェクト管理の基礎知識
2.資格取得:PMP、プロジェクトマネージャー試験など
3.実務経験の積み上げ:様々な規模・種類のプロジェクト参加
中期的な戦略(3-7年)
1.専門領域の確立:特定業界や技術領域への特化
2.リーダーシップの発揮:チーム管理、ステークホルダー調整
3.ネットワークの構築:業界内での人脈形成
長期的な戦略(7年以上)
1.戦略的思考の習得:経営視点でのプロジェクト管理
2.変革推進力の獲得:組織変革をリードする能力
3.キャリア選択の検討:フリーランス、コンサルタント、経営層など
最後に
本記事で示したデータは、PMOが単なる「つなぎの仕事」や「誰でもできる仕事」ではなく、高い専門性と市場価値を持つ魅力的な職種であることを明確に証明しています。
「PMOやめとけ」という声に惑わされることなく、客観的なデータに基づいて自分のキャリアを判断することが重要です。適切なスキル習得と経験積み上げを行えば、PMOは十分に満足できる収入と成長機会を提供してくれる職種です。
これからPMOを目指す方、現在PMOとして働いている方、そしてキャリアチェンジを検討している方にとって、本記事のデータが有益な判断材料となることを願っています。
データソース・参考文献
主要データソース
•レバテックキャリア:PMO正社員年収データ(n=195件)
•フリーランススタート:フリーランスPMO案件データ(n=10,133件)
•IDC Japan:国内ITサービス市場予測
•厚生労働省・IPA:ITSSレベル別年収データ
調査・分析機関
•DXコンサルタント(ContactEARTH for Expert)
•クロスオーバー
•プロフェッショナルハブ
•フォスターフリーランス
本記事のデータは2024年〜2025年時点の最新情報に基づいています。

